将来薬剤師を目指す方、薬剤師の皆さん、日々の学業、業務、本当にお疲れ様です。正確さが求められる薬局や病院での業務は、大きなやりがいがある一方で、常に過誤のリスクと隣り合わせです。
「自分は大丈夫」と思っていても、人間はミスをする生き物。もし、調剤ミスや服薬指導での誤りが原因で、患者様の健康を損ねてしまい、損害賠償を請求されたらどうなるでしょうか?
この記事では、薬剤師の「もしも」を支える非常に重要なセーフティネット、「薬剤師賠償責任保険」について、その必要性、補償内容、そして選び方を解説します。
🚨 1. なぜ薬剤師賠償責任保険が必要なのか?
薬剤師賠償責任保険は、業務上の過失(ミス)によって患者に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に、その費用を補償してくれる保険です。
- 調剤過誤のリスク: 薬の渡し間違い、量の間違い、相互作用の見落としなど、過誤の例は多岐にわたります。
- 高額な賠償リスク: 誤った調剤により重篤な健康被害が発生した場合、賠償金額は数千万円に上ることもあります。
- 自己負担からの保護: 個人でこの高額な賠償金を支払うのは非常に困難です。保険は、あなた自身の財産を守る盾となります。
近年、医療に対する意識の高まりから、患者様やそのご家族が賠償請求を行うケースも増えており、「備え」はもはや必須と言えます。
🏢 2. 勤務先が加入している保険だけでは不十分?
多くの病院や薬局は、法人として賠償責任保険に加入しています。しかし、その補償範囲が個人(薬剤師自身)の過失をどこまでカバーするかは、契約内容によります。
⚠️ 確認すべきポイント
- 補償の「主役」は誰か?:法人が契約する保険は、主に法人(薬局・病院)の責任を補償するものです。
- 免責事由の有無:保険によっては、「重大な過失」や「故意」と判断されるケースでは、保険金が支払われないことがあります。
- 求償権の行使:法人に代わって保険会社が賠償金を支払った後、保険会社や法人が、過失を犯した個人(薬剤師)に対して費用を請求する(求償権を行使する)可能性もゼロではありません。
個人で加入する保険は、あなた自身の過失責任を直接的にカバーしてくれるため、より安心感が高まります。
📑 3. 補償される具体的な事例(例)
この保険が活躍するのは、以下のようなケースです。
| 事故の状況 | 薬剤師の行為 | 発生した損害 |
| 調剤過誤 | A薬とB薬を誤って調剤し交付した。 | 患者が体調を崩し、入院・治療が必要になった。 |
| 服薬指導の過誤 | 禁忌薬の情報を伝え忘れた、または誤った服用方法を指導した。 | 患者が副作用により健康被害を負った。 |
| 情報提供の過誤 | 新薬の副作用に関する重要な情報を患者に伝え忘れた。 | 患者がその副作用を認識せずに服用を続けた結果、症状が悪化した。 |
ポイント: 補償されるのは、あくまで「業務上の過失」による「身体の障害」または「財物の損壊」に対する法律上の損害賠償金です。
🛡️ 4. 加入方法と選び方のヒント
薬剤師賠償責任保険は、主に以下のルートで加入できます。
- 日本薬剤師会(日薬)による団体契約
- 各都道府県薬剤師会を通じた契約
- 一般の損害保険会社が提供する商品
✅ 選ぶ際のチェックポイント
- 補償限度額: 賠償金の上限額。最低でも1億円程度が目安とされます。
- 示談交渉サービス: 損害賠償問題が起きた際、保険会社が患者様との示談交渉を代行してくれるサービスがあるか。精神的な負担を大きく軽減してくれます。
- 対象範囲: 薬局勤務、病院勤務、管理薬剤師、パートなど、自分の勤務形態が対象になっているかを確認しましょう。
📝 まとめ
薬剤師賠償責任保険は、あなたのプロフェッショナルなキャリアと、大切な生活を守るための必須の投資です。
万が一の事態に備え、まずはご自身の勤務先の保険の状況と、個人の保険の必要性について検討してみましょう。
さあ、今すぐ行動を!
「もしもの時に、患者様へ誠実に対応できる体制」を整えることが、プロの薬剤師としての責任でもあります。ご自身が加入されている団体や保険会社に問い合わせてみましょう。

